インタビュー Vol.83
 

可憐な美しさの中から滲みでる女優の品格

夢咲ねね

 

 

宝塚歌劇団に入るきっかけは

私は富山県出身なのですが、実は中学3年生まで宝塚のことを知らずにいました。学年の音楽の担任の先生が紫吹淳さんの大ファンで、紫吹さんが大劇場で公演をしている時に、修学旅行で観に行こうということになって、真琴つばささん主演の『ノバ・ボザ・ノバ』を鑑賞したのが宝塚を知ったきっかけです。それで、ちょうどその頃進路調査があって、「このまま普通に高校に進学したくないな。志望校も特にないし、将来どうしようかな?」と考えている時でしたので、「あ!私はここへ行くんだ!!」と直感で決まりました。
 

芸名の由来は

上級生の方とかぶらず、皆さんにすぐ覚えてもらえるような名前を家族で考えました。上の名前は夢が咲くように、「ねね」は父が考えてくれました。
 

妹さんの愛加あゆさんも娘役トップで、姉妹でご活躍されていましたね

妹も雪組で壮さんの相手役をさせていただだいたり、同じ立場でしたので妹とはすごく仲良しです。宝塚というのは鍵のかかった宝箱のような世界で、美しく華やかでありながら、辛いこと、苦しいこと、泣きたいことなど様々な試練を経験させていただきました。互いに娘役トップとしての責任があるので、愚痴や弱音を外で吐くようなことはできないし、いつも強い意志で妹と気持ちを共有しながら、お互いに励まし合って、頑張ってこられたことが姉妹の絆として、とても良かったと思います。当時は一緒に住んでいたのですが、戦友みたいな関係でしたね。今でも、お互いに悩みなどの相談ごとができる心強い存在ですし、とても励みにもなります。
 

ねねさんは身長も高い方ですし、男役には憧れませんでしたか

娘役か男役かは自分で希望することができるのですが、初めて宝塚を観た時の檀れいさんの美しさに憧れておりましたので、娘役を目指しました。

 

舞台の本番に入る時のスイッチの切り替え方などはありますか

宝塚時代からONOFFの切り替えを仕込まれていたので、私はあまりそういうのを意識していないように思います。というのも、開演までにやることが多すぎて、それをこなすのに目一杯でしたので、とにかく役に集中しようとしていますね。多分、自分でルーティンを作ったりしたら、逆に「それをこなせなかったらどうしよう」とかえって不安になってしまうかもしれませんね。
 

喉のケアはどのようにされていますか

あまり何もしないタイプかもしれません。何でも気にしてやり過ぎると神経質になってしまうタイプなので、自然体で過ごすのが私には合っているみたいです。
 

精神面のコントロールは

宝塚に在団中は24時間、作品とお稽古のことで頭の中がいっぱいで、一日が倍くらい欲しいと思ったほど時間との闘いでした。そんな毎日を12年間過ごしましたのでメンタルは相当強くなりましたね。宝塚時代にメンタル面も鍛えてもらったと本当に感謝しています。
宝塚を退団してから「24時間てこんなにあるんだ!」と感じました(笑)
 

退団されてから思い出深い舞台は

退団して年目になりましたが、これまでに素敵な作品に沢山巡り合うことができて幸せな5年間でした。宝塚では、同じ組子の中で同じ作品を何年も演じるので、全員の心を分かち合った状態で自分をさらけ出していくのが自然でした。退団後、最初の出演がミュージカル『サンセット大通り』ベティ役でしたが、共演する役者さんもお互いのことを深くは知らないまま一緒に作品作りを進めて行く中で、「意外に私って人見知りなんだな」って思いながら、自分をさらけ出して演じられるまで自分との葛藤がありましたね。でも、年齢が近い役者さんが多くて、すごく助けていただいたのでありがたかったです。
そして、「夢咲ねね」は宝塚で12年間かけて築き上げられたものなので、卒業したら今までの自分とは別の、新たな舞台に立つ「夢咲ねね」と対面していくのがいちばん難しかったですね。

 
 

様々な作品を通じて出会う役者さんとの繋がりは

その作品ごとに、色んな方々と毎回新しい出会いがあるので新鮮ですし、そういった沢山のご縁をいただけて本当にありがたいですね。
 

舞台『マトリョーシカ』のお稽古中とのことですが、このご時世で不便なことも多いでしょう

先日PCR検査をして全員が陰性を確認しました。今回はお芝居なので役者同士の距離も近くなりがちなのですが、お稽古の場でもソーシャル・ディスタンスを保つのが大変で、制作さんも気を遣ってくださっていますね。
 

ねねさんにとって究極のラブソングは

研究科2年の時『エリザベート』に出演した際に、ウィーンで本場の『エリザベート』を観たいと思って、当時の月組のプロデューサーさんがチケットを手配してくださったのですが、その時に「『ロミオとジュリエット』もやってるよ」って教えてもらったんです。『ロミオとジュリエット』は、正直に言うと観る前はそんなに期待していなかったのですが、実際に観てみたら感動と衝撃がすごすぎて熱を出しちゃったんです!それで、次の日『エリザベート』を観劇する予定だったのですが、一日ホテルで寝込んでキャンセルしてしまうくらいのショックを受けちゃったんです!「こんなに素晴らしい作品はない!!」と、日本で上演される18年くらい前の記憶が今もまだ鮮明に残っています。その時は無我夢中でCDを買って、日本に戻ってからも毎日毎日そればかり聴いていました。そして、いつか日本でも上演して欲しいと思っていたら、なんと!柚希礼音さんの主演で星組で上演することが決まって、しかも夢だったジュリエットを演じるチャンスをいただいて本当にびっくりしました。まさか自分がジュリエットを演じるなんて想像もしていなくて、幸せと感動で身が震えましたね。なので、やはり私の中では、ジェラール・プレスギュルヴィックさんの『ロミオとジュリエット』を一生聴き続けるんだろうなと思います。特に、その中で「いつか」と「エメ」と「バルコニー」はもう甲乙付け難い曲です。

 

日本ではチケット入手困難な作品ですが、ウィーンでは簡単にチケットが買えるものなのですか

そのチケットは特別に取っていただいたのでわかりませんが、ちょうどその時『モーツァルト』も上演していて、街の中でモーツァルトに扮装した人がチケットを売っていたりしましたね。演劇や芸術文化が盛んな国ですから、多分普通に買えるのだと思います。
 

最後に、《LOVE SONG COVERS the WORLD 2020 》を楽しみにしてくださっているファンの皆さまにメッセージをお願いします。

今回のコンサートでは、素敵な歌い手の皆さんとご一緒させていただけるのが嬉しくて、どんなステージになるのか私も楽しみにしています。「LOVE SONG」のテーマどおり、愛に溢れたコンサートになるよう心をこめて歌います。
オンライン配信もあるということですので、遠方のかたや、当日会場に来られないかたもぜひ聴いていただけると嬉しいです。 
 
 

退団されてからの『サンセット大通り』は勿論、『1789-バスティーユの恋人たち』ほか、夢咲ねねさんご出演の作品はよく鑑賞させていただいておりますが、直接お目にかかりお話をするのは今回が初めてでした。とてもしなやかな美しさと品格を兼ね備えていらっしゃって、知的な女優さんというのが第一印象です。舞台では、女性なら一度は身につけてみたいと憧れる、フランス人形のようなドレスを身に纏い、プリンセスの風格そのもので「コルセットは苦しくないですか?」とお訊きしたら、宝塚時代は殆どコルセットを身につけた衣装が多かったので、逆に締め付けていないと不自然な感じなのだそうです。ミュージカルは勿論、ストレートでも引っ張りだこの実力派。優しい微笑みに隠れている強い精神力で挑む夢咲ねねさん、今回の《LOVE SONG COVERS》ではどんな夢の世界へ誘い、どんな魅力的なパフォーマンスを魅せてくださるか、可憐で美しいねねさんの“夢から醒めない”不思議な魔法にかかってしまうかも。


インタビュアー:佐藤美枝子 
カメラマン:Ami Hirabayashi
許可なく転載・引用することを堅くお断りします。

夢咲ねね

2003年宝塚歌劇団に入団。09年星組トップ娘役に就任。出演作に『ロミオとジュリエット』『オーシャンズ11』『黒豹の如く/Dear DIAMOND!!』などがある。20155月に宝塚歌劇団を退団し、同年7月には『サンセット大通り』(鈴木裕美演出)に抜擢。シェーファー役を好演。以降、『1789 -バスティーユの恋人たち-』のオランプ役や『グレート・ギャツビー』のデイジー役(小池修一郎演出)、『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』のデア役(上田一豪演出)と各ヒロインを務める。他に『ビッグ・フィッシュ』(白井晃演出)のジョセフィーン役など、舞台を中心に活躍。2020年4~5月、ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season3でアニータ役に抜擢。

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