インタビュー Vol.45
クールにスタイリッシュに自然な佇まいが絵になる俳優
平方元基


 
●「王家の紋章」の千秋楽の感動も醒めやらぬですが、近況はいかがでしょうか。
いや、もう次の作品(「スウィート・チャリティ」)の稽古に入っているので、終わった余韻に浸っている暇がないですね〜。今はとにかく必死になって稽古をしています。「王家の紋章」の千秋楽の日に打ち上げがあって、そこでとてもリフレッシュできました。

 
●いつも自然体の平方さんですが、落ち込んだりすることはありませんか。
いっぱいありますよ!でもそのスパンが人より短いのかもしれないです。それに考えると次々と出てくるので、悩んで落ち込んでいる時間もないかな〜って。悩みに真摯に向き合う時間も大切だけど、やっぱり、前に進むためには突貫工事をしなければならない時期も必要だなって思いますね。今は悩まなきゃいけないことがあっても、またすぐ別の悩みが出てきて、全然追いつかないです(笑)。でも悩む時間がないって幸せですよね。その一旦置き去りにしたものを忘れず、いつか振り返る余裕ができた時に、もう一度その悩みと向き合えればいいんじゃないかなって思います。

 
●毎日が楽しくて仕方ないっておっしゃっていましたが。
そうですね。一人の時間も好きですが、人と会っている時間の方がもっと好きですね。人の考えを聞いて話し合うのは、想像力をかきたてられて、このお仕事をする上で凄く役に立ちます。自分じゃない、いろんなタイプの人を演じなければならないので、出来るだけ多くの人に会って、いろんな考え方を知りたいです。


 
●「王家の紋章」の本番では、舞台上で震えない日はなかったと、でもそんなに緊張されているなんて微塵も見せなくて。
そうですね。舞台って怖いですよ、「ちょっと待って!もう一回やり直させてください」っていうことができないですから。舞台は生き物なので、何も起こらない日はないですよ。いろんなハプニングが毎日3つか4つは起きていました。でもそんな中で緊張感を保てていたからこそ、気を抜かずに集中できた部分もあると思います。

 
●平方さんのイズミル王子の衣装が素晴らしく似合っていましたね。日本人の体型であの衣装を着こなせる俳優さんはそうそういないと思いました。
これまでのミュージカル作品で、様々な衣装を着させていただいた分、身のこなし方や、衣装さばき、こういう衣装の時はこういう立ち姿が似合うなど、色々と勉強を重ねてきました。衣装って稽古場では着ないですし、メイクをした後、いちばん最後に身につけるものなんです。言い換えると衣裳の着こなしがいちばん最後にする役作りです。今回イズミル王子としての佇まいや衣裳の着こなしを褒めて頂けて、今までの経験を生かすことができたなって実感しました。ただこの衣装、本当に暑かったです(笑)。


 
●来年の再演も4月5月とすごく早くに決まったのですね。
今回は東京公演しかなかったのですが、来年は大阪公演も決まって嬉しいです。初演のチケットがすぐに完売したって聞いた時、正直びっくりしましたよ!台本もまだ出来ていないのに(笑)。まだまだ日本のミュージカル界は勢いがあるなって思いました。

 
●今回のコンサートは平方さんを一目見て、一瞬で浮かんだタイトルがダンディなので、「ミュージック・イズ・ダンディ」とつけさせていただきました。
でもこのタイトルの「ミュージック・イズ・ダンディ」ってミュージックがダンディなのであって、僕がダンディってことじゃなくてもいいんでしょう(笑)。サブタイトルは、究極のラブソング〜魅惑のスタンダードジャズ〜伝説のミュージカルナンバー。まだミュージカルデビュー5周年の僕に務まるのかプレッシャーも感じますが、この日を伝説の夜にしちゃおうという意気込みですよ(笑)。まず究極のラブソングですから、これはあの名曲「I LOVE YOU」を歌わないと、と思っています。皆さまと共有できるコンサートにしたいので、僕の好きな曲を並べるのではなく、誰もが知っている曲を中心に選びたいですね。様々なアーティストの名曲をお借りして表現するので、「初めまして」の方も、皆さんの中に流れている馴染みある旋律が僕との距離感を近づけてくれるんじゃないかなって思います。そして今まで僕を温かく見守ってきてくださったファンの方々には、この5年間の成長を確実にお見せしたいのと、ここから更にステップアップして、ダンディへの階段をのぼっていく平方元基の新たな一面も見ていただきたいと思っています。今回は気負わなくてもそれができそうな気がする。そしてこのコンサート全体を通して、5周年の今しかできないものを表現したいですね。

 
●今回はJAZZにもチャレンジされますが、歌唱力で押すJAZZではなく、ミュージカル俳優さんが歌うドラマチックなJAZZも聞いてみたいですね。
今回はゲストのジャミン・ゼブさんたちの力もお借りしながら、新しい音楽との出逢いを皆さんと楽しみたいと思っています。今年の春、「SHOW ル・リアン」で歌わせていただいたJAZZのスタンダード曲「煙が目にしみる」も披露する予定です。JAZZって最初はどうやって歌うんだろうって凄く戸惑っていたんですが、決まった型があるわけじゃなく、その人の持つ雰囲気やセンスが味となって魅力がでてくると思うので、もう一度ブラッシュアップしたものをお届けできたらいいなって思っています。


 
●今回のメンバーとの初共演は?
ジャミン・ゼブさんやハクエイ・キムさんとの出逢いも嬉しいですね。ミュージカルの世界ではなかなか出逢えないJAZZ界のアーティストとの共演、今からとても楽しみです。先日もハクエイさんとキー・チェックをしたのですが、とてもおおらかな方で。肩肘張らずにいろんなディスカッションができるので、良いコンサートになりそうです!

 
●ミュージカルの舞台と歌のステージでの違いは?
ミュージカルって台詞として歌詞が存在していて、その役を演じながら歌うので、今回「平方元基」自身として歌うにあたっては、会場のお客さんやミュージシャンの方たちとその場でのセッションを楽しみたいですね。お客さんの反応も見ながら全員が輝けるステージにしたいなって思います。デビュー前は人前でマイクを握って歌うことなんて全く想像もしていなかったのに、何もわからないままミュージカルの世界に飛び込み、色々な方々との巡り合わせがあって、こうしてコンサートをさせていただくことになり、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。目まぐるしく自分の人生が変わった5年間ですが、一生懸命走り続けているといろんな人との出逢いがあるし、いろんな景色も見えてくるので、このまま5年先10年先も走り続けられたらいいなって思います。

 
●デビュー当時からいままで心がけていたことはなんでしょうか。
自分を見失わずにいようということですね。色々なことに悩んだり、立ち止まったりしても、結局自分で歩きだすしかないでしょう。だから辛いとき、哀しいときも、そんな自分を素直に受け入れるし、その状況から逃げないように心がけていました。それに素直さが欠けると向上のスピードが落ちると思うんです。人生って運とかタイミングの連続じゃないですか。そのチャンスを逃さないためにも、マネージャーさんや演出家、共演者の方やスタッフさんもそうですが、自分が信頼できる人に対して常に素直でいることが重要じゃないかと思います。何か壁にブチ当たった時に一人で悩んでいても、それだけに時間が取られてしまうから、それを正直に周りの人に伝えて、みなさんに助けていただきながら、ここまで走り続けてこられました。

 
●ステージに立ったときに最初に思うことはどんなことでしょうね。
自分自身のことを祝ってもらうのって、これまでの人生では誕生日くらいでした。それに役者って何周年って節目をお祝いすることがあまりないから、いま自分が「ミュージカルデビュー5周年!」っていう実感もなくて、「ボクってなんかアーティストっぽいじゃん!!」と率直に思いました(笑)。嬉しいけれど、なんだか小っ恥ずかしかったですね(笑)。でも楽しみだし、頑張りますよ!役者って普段自分の言葉で発信することが少ないのですが、僕はきっとこの日、デビューしてからのいろんなことを思いながら歌ったり、皆様にお話させていただいけると思います。

 
●最後に意気込みをひとことお願いします。
ジャミンさんたちは凄くピュアでラフな方達で、何にも染まってない感じを受けました。僕は普段、イメージが先行してしまうので、メロディーから入ったり、歌詞から入ったりするのですが、ジャミンさんたちは音楽に対して凄く純粋に楽しんでいらっしゃる感じがしました。ジャミンさん達の歌に僕は浄化されるような気がします(笑)。ミュージック・ディレクターのハクエイさんもミステリアスな方ですが、世界で輝く素晴らしいテクニックやアレンジ力をお持ちの方なので、ご一緒させて頂けてとても光栄ですし、どんなコンサートに仕上がるのか本当にワクワクしています。みなさまもぜひ楽しみにしていてください。



役者は自身のフィルターを通して人を感動させる使命があると思いますが、努力だけでは成し得ない、持って生まれた際立つ個性と柔軟な感性は経験を重ねるごとに輝きを増し、その注目度で常に主要な役を演じることができるのだと思います。2008年上京、その僅か3年後の2011年「ロミオ&ジュリエット」のティボルト役に大抜擢。いまや日本のミュージカル界では欠かせない存在として快進撃を続けている平方元基さん。
既に来年10月まで情報解禁している出演ミュージカルがびっしり! インタビュー中もサービス精神旺盛で、笑いネタをとってくれるのでスタッフ全員が笑いっ放し。天性の明るさが周囲をhappyにしてくれるオーラに包まれている元基さんの元気の基(もと)は常に自分に素直に正直に前を見つめて突き進む強く、しなやかな精神にあると思います。

 

インタビュアー:佐藤美枝子
カメラマン:Koji Ota

 




 
平方元基(ひらかた げんき)/1885年生まれ、福岡県出身。身長184cm、血液型AB型。08年TVドラマで俳優デビュー後、数々のドラマ、舞台、映画に出演。11年「ロミオ&ジュリエット」でミュージカル初舞台を踏み、以降、人気と実力を兼ね備えたミュージカル界の新星として活躍中。過去の主な出演作に「エリザベート」「サンセット大通り」「ダンス・オブ・ヴァンパイア」「王家の紋章」他。今後の出演ミュージカルは「スカーレット・ピンパーネル」「レディ・ベス」等。ソロコンサートも開催。今最も勢いに乗るミュージカル俳優として注目されている。
 


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