インタビュー Vol.35
B.B.のミュージックをマジックする音楽のマジシャン!
本田雅人


 
●前回のビッグバンド・フェスティバルでは初めてご出演いただきましたが、いかがでしたか?
参加させてもらえたことはとても嬉しかったですね。うちの両親も観に来てくれたんですけど、すごく喜んでくれて。見砂和照と東京キューバンボーイズが出演されていましたが、父親世代はまさにドストライクだったらしくて、僕のバンドよりそちらの方を楽しんで聴いてたみたいです(笑)。今はこういうビッグバンドに特化したイベントって限られていますね。でも、そんなふうにいろんなタイプの、いろんな世代の人たちが楽しめるのが、このビッグバンド・フェスティバルの魅力ではないでしょうか。

 
●今回は、本田雅人B.B.Stationをはじめ、エリック・ミヤシロ EM BAND、角田健一ビッグバンドが一堂に揃うという他にない機会なのでとても楽しみです。
角田さんはシャープのときの同僚なんですよ。その後、高橋達也と東京ユニオンに移られて、ユニオンが解散になってからそれを引き継ぐ形で始めたのが今のバンド。先進的なサウンドで知られていたユニオンの空気を受け継ぎつつも、他の2バンドに比べたら伝統的なスタイルをしっかり見せてくださるんじゃないでしょうか。エリックさんは言わずと知れた素晴らしいトランぺッター。きっとそれを活かしたド派手なステージを繰り広げてくれることと思います。僕たちは普段からいわゆるスタンダードなナンバーではなく、僕のオリジナル曲をやっていて。その分、レパートリー的にはかなり異質かも。4ビートのビッグバンドではない、ファンク色の強いエレクトリックなサウンドを楽しんでもらえたらと思っています。


 
●ビッグバンドの魅力とはなんでしょうか?ジャズに詳しくない方にも是非お越しいただきたいと思っているのですが…。
ビッグバンドの魅力は観たらわかる。残念ながら言葉で説明するのがいちばん遠いんですよね。そもそもなぜ華やかだったビッグバンドが衰退したかというと、シンセサイザーの台頭に取って代わられたのも理由のひとつだと思います。だけどやっぱり人力で鳴らす音には、シンセサイザーにはない良さがある。13~15人の管楽器チームによる一人ひとりの息を使って鳴らしている音を聴いてもらえれば、きっと“なるほど”と納得してもらえると思います。また、ホールの響きがいいんですよね。CDで録音されたものとはまったく違う。特にシビックホールはとても素晴らしいホールですので、ここでやれるのもすごく大事なこと。いろんな人間が集まって、ひとつの音楽をつくっているこの圧倒的な迫力に一度ふれてみてほしいですね。

 
●生で聴くことが一番ですよね。特にジャズはアドリブも楽しみの一つですし。
自由な部分と、構築していかなければ成り立たない部分が共存している。それが、ビッグバンドの面白さでもあります。ジャズというジャンルの中には入ってますけど、4~5人でやっているジャズは、テーマがあって、あとはもう自由でアドリブの世界。だけど、ビッグバンドは半分以上は譜面に書かれたものがあって、その中にジャズ的要素がふんだんに含まれている。そのバランスがいいんじゃないかと。譜面に書かれたアドリブではない部分にも、どこかジャズっぽさがあって。そんなジャジーなサウンドだったりニュアンスだったりフレーズが、ブラスバンドとはまた違うところ。プレイヤーもその自由さを楽しみながらやっているんですね。それが聴く人にも、ビッグバンドならではの解放感をもたらしているんじゃないでしょうか。


 
●98年にT-SQUAREを退団されて以降、ソロアーティストとして第一線で活躍し続けていらっしゃいますが、そもそも音楽の原点はなんだったのでしょうか?
小学生の頃、地元にキャバレーがあって、そこで演奏しているバンドのオッちゃんによく楽器を習っていたんですよね。学生時代に、ニュー・タイド・ジャズ・オーケストラの立ち上げメンバーとして関わったり、山野ビックバンドジャズコンテストで優勝して、それがきっかけでシャープに入ったり、何かしらビッグバンドに関わる機会が多かった。本当は、本田雅人B.B.Stationもこんなに長くやるつもりはなかったんですよ(笑)。1回やって、それきりにするつもりだった。でも、今もこうしていろんな機会に呼んでいただけるのは、とても光栄なことです。他の2つのバンドも素晴らしいバンドなので、自分たちなりの個性を出しながら、みなさんに楽しんでいただけるイベントにできればなと思います。

 
●たしかご両親が学校の先生ですよね。「学校の先生になりなさい」とか言われなかったですか?
高校の時、歌を歌っていたのでシンガーソングライターになりたかったので、まず高知から東京へ行かないと!と思っていました。当時はキャバレーとかでも仕事が沢山あった時代だから、キャバレーでも専門学校でもいいから、とにかく東京へと。でも親は当然、「大学に行かないとだめだ」と言ってました(笑)。高校2年の終わりごろに、今後のことを真剣に考えたけど、いまから普通の大学では無理だろうと思って、クラシックのサックスを勉強して、国立音楽大学に入ったのです。ロックやフュージョンとかでやっていけないと思っていたので、教職免許を取りました。

 
●原信夫とシャープス&フラッツに入ったのはいつごろから?
シャープは大学3年の時からですね。大学に入ったときから色々と仕事をしていました。歌伴のツアーとかにでていましたね。初ステージは忘れてしまいましたけど。演歌もやりましたよ。色々やっていると仕事ができるようになって、だんだん仕事が増えて、だんだん田舎に帰らなくなって。親もそれで成り立っているならいいか、と納得してくれるようになったという(笑)。

 
●原信夫さんが昨年のビッグバンド・フェスティバルに一人で聴きにいらっしゃってくださいましたよ「本田さんの演奏を聴きにきた!」と(笑)。本田さんのサウンドがご機嫌だったとおっしゃっていました。
そうなんですか!あの時、会えなかったですよ! 残念です。

 
●いままで先ほどのシャープや宮間利之とニューハードとか岡本章生とゲイスターズなどご出演いただいたのですが、今回の角田健一ビッグバンドは、実は初出演なんです。
一番出ているバンドかと思っていましたけど、それは意外でしたね!


 
●本田さんはツイッター数で1万以上のフォロワー数で、とても人気ですよね。Facebookもマメに投稿されていますし、毎回とても楽しみに拝見しております。沢山コメントが書き込まれていますが、忙しくて見る時間とかないんじゃないですか?
見てますよ。すごく見てます(笑)。

 
●今年は出演バンドを少し変えてみました。
EMバンドは学生バンドとか好きそうですよね。華やかだしきっとそういうサウンドが好きな若い方にはとても良いアピールになるんじゃないですかね。

 
●今回、デビッド・マシューズさんの曲をエリックさんのビッグバンド用にリアレンジして、初ご披露いたします。
実は自分、デビッドのコンボでメンバーなんですよ。トロンボーンの英二郎くんもいる。デビッドさんは、最近日本語がうまくなって、MCも日本語でやってますよね。すごくいい人です!

 
●本田さんとエリックさんのバンドメンバーが結構かぶってしまったと思いますが、あれだけのメンバーを集めるのは大変じゃないですか
そうですね。ツアーじゃなくてこの1本だけですから、なかなか調整が難しかったです。何人か候補がいないと難しいです。被るもなにも、エリックが被ってますからね(笑)。そういえば昔、シャープにいた時はビッグバンドのスタイルが主流だったので給料制でした。12月の繁忙期は給料がアップする(笑)。そういうビッグバンド主流の時代だったら固定メンバーでできるのですけどね。

 
●このイベントは、フェスティバルですから本当は最後に合同演奏とかしたいのですけど、みんなケツカッチンで忙しくなかなか実現が難しくて…。いつかはやってみたいですね。文京シビックホールでしたら、ぎりぎり3バンドが入るかも。
それは絶対豪華ですよね。それだったらメンバーがかぶっていると歯抜けになっちゃいますね(笑)。


 
●昭和音大では先生として行っていますよね?
行ってますね、週に2回ほど。

 
●大学の先生もされているとかなり忙しいですよね。
そうですね。ただ、大学って、夏休みや春休みの期間が長いので、その間は何もないですよ。

 
●一番やりたいこと、一番比重を置いていることなどありますか?
全部なんですけどね。自分のバンド、ビッグバンド、学校もやりたいし、ずっと現役ミュージシャンでやりたいし、新しい人も育てたいし…。色々やりたいですね。今度クラシックサックスのフェスがあって、出演するのですよ。サックス生誕100周年みたいですね。また、クラシックの人達と何かやれたらなと。このあいだ、オーケストラとやりましたね。完全なオケでした。あれは凄く気持ちよかったです。

 
●佐渡裕さんのシエナ・ウインド・オーケストラとの共演されたことあります?
実はないのですよ。佐渡さんといえば、先日「題名のない音楽会」に出演しましたよ。ちょこっとしか映ってなかったですけど。司会が五嶋さんに代わりましたよね。映画音楽特集のときでした。楽しかったです。

 
●最後に、本田さんのようにテレビでかっこよく出演したい!と思っている若い子たちへ、メッセージをいただけますか?
うーん、そうですね…。先日出演したブルーノート東京のライブには、九州や北海道から来て下さってました。ビッグバンドメンバー全員という方々も。遠方からほんと嬉しいですよね。エリックさんのライブには、彼のスタイルのようなトランペッターを目指している人が来ていると思うし、ジャズが不況だとか聞きますけど、これから素晴らしい若手が沢山出てくると思いますよ。一緒に盛り上げて行きたいですね。



昨年初参加してくださった本田さん率いるB.B.Stationの反響をたくさんいただきアンケートでも「ぜひ次回も!」というお声をいただきました。特に若い世代には圧倒的人気でビッグバンドを志す次世代へのパワーの源流になっていただきたいと願うところであります。
本田さんがクリエイトするキャッチーでポップなノリのサウンドは心ウキウキにさせてくれますよ。

 

インタビュアー:佐藤美枝子
 
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