インタビュー Vol.29
シャープなダンスと妖艶な眼差しが魅力的な
水 夏希


 
●最近も水さんの舞台を拝見させていただいて、素晴らしいステージで圧倒されました。
いつも新しいことに挑戦というか。宝塚以外のことは全て初めてなので。

 
●何百回とおなじことを聞かれていると思いますが、小さい頃はどんなお子さんでしたでしょうか。
私は双子なので、双子の妹とよく遊んでいました。ピンクレディーのマネをよくしていましたね(笑)。「UFO」とか。

 
●小さいときから歌とか踊りとかお好きだったのですね。
家族がみな体育会系で、両親がテニスをやりますし姉と妹が体育の教師で。父は理科、母は英語の免許を持っていて、教師一家なんです。だから、子供の頃は家族で舞台を観にいくようなことはなく、全然そういった芸術には触れていなかったですね。ボリショイサーカスには1度連れていってもらいましたけど(笑)。勉強が大好きでしたし、推薦で大学にいくつもりで勉強していました。

 
●歌と踊りといった環境ではなかったのですね。では、なにがきっかけで?
高校の時にミュージカル部で劇をやった時に、女子高だったのですが、男役と女役にわかれて宝塚の作品をやっていたんですよ。それで「なにーこの世界!ここに入る!」みたいな。



 
●その時は何の演目を観たのですか?
えーと、「テンダー・グリーン」です。

 
●えー!!!
「ミー・アンド・マイガール」や「屋根の上のバイオリン弾き」もやりましたよ。

 
●えー!!!凄い。それを将来、宝塚でおやりになるわけですよね!そんなことってあるのですね。そのときにミュージカル部に入らなければ、体育の先生とかになっていたのかもしれませんね!
同級生が感慨深いと言っていました(笑)。都内の女子高に行きたくて。短いスカートの可愛い制服とかね(笑)。そこに入れなくて、地元の女子高に入ったわけですけど、もし都内の女子高に入っていたら全然違う人生だったと思います。

 
●ご両親がよく芸能界に進まれることをお許しになられましたね。
かなりびっくりしていましたけどね(笑)。でもまあ、わりと好きなことをやりなさいって言ってくれていたので、自由にしていました。姉はテニス、妹は新体操をやって自由にやっていましたね。

 
●本当にそういう自由な環境だったのですね。ダンスが得意なのも体育会系だからなのですかね。
小さいときに器械体操を少しやっていましたが・・・。なんですかね・・・、不思議ですよ。よく小さいころから音楽に触れて、ダンスも習っていて、という方が多いですけど。女子高のミュージカル部が人生の転機でしたね。

 
●バレエはいつごろからですか?
バレエは高2からです。

 
●え!遅いですね。宝塚を目指そうと思ったのはいつごろですか?
高2の冬です。高校のミュージカル部の同級生が宝塚を受けるというので、「じゃあ!私も受ける!」ってなって(笑)。1回目はダメだったんですよ。高3までしか受験資格がないので、じゃあ最後1年間、宝塚の受験勉強をしてみて再度試してみたいと思いまして。もしダメなら大学受験をしようと思っていましたけど。で、高3のときに受かって。

 
●すぐに夢を叶えちゃったのですね。凄い倍率でしょうから凄いですよね。受かったときはのお気持ちは?
あまり憶えていなくて。うーん・・・、泣いたかな(笑)。

 
●宝塚での初舞台は?
涼風真世さんのさよなら公演が初舞台でした。宝塚の公演は基本的にお芝居とショーの二本立てなのですが、ショーの方は、ブロードウェイ・ミュージカル界では有名なトミー・チューンさんが来日して構成演出をされた作品で、結構特殊な2本立てでしたね。でもそのときは、彼の凄さを全然知らなくて、お芝居の「グランドホテル」の素晴しさも全くわからなくて。いま思えば、なんて素晴らしい作品が初舞台だったのか!と思いますね。



 
●いきなり凄いのにでちゃったのですね。でも、わからないですよね。私も「グランドホテル」はブロードウェイでも観ました。素晴らしいですよね。しかし、本当に運が強いのですね。
いやー、どうですかね。タイミングというかね。

 
●それからトップになられたのは?
入団して14年目ですね。

 
●そのときは、それは凄い感激されたのでは?
歌劇団の制作部長に呼ばれて「次のトップをやっていただけますか?」と聞かれました。もちろん「やらせていただきます」と。同時に終わりも考えましたね。ずっといられないというのもわかっていましたし、バトンタッチという意味で。ある程度目標をもってやっていきたいと思っていたので。

 
●トップになるということは、追われる側になるわけですよね。
そうですね。トップになるのが遅かったので、準備時間があったといいますか。といいましても不安要素も沢山ありましたね。トップになってからの疲労は、スカイブルーみたいな(笑)。なんていう心地よい疲労なんだろうって。作品によっては大変なこともありましたけど、お客さまが楽しんでくれるのであればどんな苦労も惜しまないとますます思うようになりましたね。このために頑張ってきましたから。

 
●みなさん宝塚になったらトップを目指しているわけですよね。ほんとになれる人って氷山の一角ですよからね。昨年100周年、これまで4500人を輩出してきたわけですね。
改めて実感しますよね。凄く有り難い時間を過ごさせてもらったのだなあって。

 
●トップの待遇は違います?(笑)
何もかもが違います。スタッフさん達の言葉使いも違いましたね(笑)。良いピラミッドですよね。

 
●上下関係が厳しいのでしょ?
軍隊に入ったことがないのでわかりませんが、軍隊みたいですねって言われましたね。わりとワンマンでやってきていましたけど、上だけ(自分だけ)がやりたいようにやっていてはうまくいかないとわかっていました。できるだけ下の意見を聞くようによくディスカッションはするように。下級生に、「あなたはどう思うの?」って聞いたり。

 
●トップのお披露目公演は?
エリザベートで、トート役です。

 
●すごいですね!
先代のトップさんと一緒に多くの上級生が辞められてしまったので、なんていうか両親が急にいなくなったみたいでした(笑)。大作で素晴らしい作品でしたし、取り残された子たちが一丸となって頑張った感じでしたね。逆に作品に育てられたというか。

 
●入団3年目で「ミー・アンド・マイガール」新人公演初主役に抜擢されたときに、「覚悟、後悔はしたくない、諦めない」、この3つキーワードを大切に、やってきたとのことで。
そうですね、その時は本当に急でしたし。悪夢であればいいなと思いましたね。それまで出番がなかった人が、急にセリフや踊りが増えて・・・、現実を受け止めなければならない。でも妥協はしたくなかったですし、お客様のニーズに絞って特価してやろうと。でも、辞めてから大分ゆるくなりました。寄り道とか休憩を楽しんでいろんなものを幅広く吸収したくて。辞めるとそうじゃない色々なものが要求されますしね。

 
●でも、とはいえ、スランプにぶち当たったり?
トップになるまで色々ありましたね。

 
●そういうときはどういう風に?
とりあえず最後まで諦めないですかね。宝塚のトップの時から「一ミリでも可能性があるなら、諦めないでやろうよ」と言っていました。

 
●今日、渡辺謙さんが「王様と私」が日本人初のトニー賞主演男優賞にノミネートされ受賞するのではないかとテレビのワイドショーでずっとやっていましたけど、素晴らしいですよね。
そうですね!ほんとうに素晴しいですよね。普段ミュージカルをされていないわけですよ(笑)。もし受賞したらずっとミュージカルをやってきた私たちはますます頑張らねばと(笑)。

 
●あの台本を憶えるだけでも気が狂いそうになる。英語のセリフですからね。
何かのインタビューで、「キャリアは持っていけないから、ゼロからスタートさせる」って、凄いなーと。




 
●トニー賞を受賞した「シカゴ」を水さんが出演していましたけど、どうでしたか?
奥が深いなって思いました。歌も踊りもストーリーも憶えますけど、それは表面的なところ。その作品をどう楽しませるのか、同じ歌をどういうアタックで歌うのかという土台は素晴らしいけれどどこまでやるのかなど。この役はトニー賞をとれる役だよと言われました。海外からシカゴカンパニーの演出家が来て下さって、演出してくださったのはとても嬉しかったですね。

 
●全てが超一流でお金のかけ方も違いますよね。そのステージにメイン・キャストとして出演されるというのはすごい。
それもタイミングなので5年ずれていたら、また別の世代のコがやっていたと思いますし。

 
●私たちジャズをやっているメンバーはというと、一日リハーサルをやって本番をやるという感じなのですね。ミュージカルの方たちのように、一か月同じ釜の飯を食べるってないですね。
でも、先日ジャズをテーマにした映画「セッション」を観まして!そうだよな、ジャズってそこまでつきつめてやらなきゃだめだよねって思いました。自分の生き方の浅はかさを知りました。

 
●そんなことないですよ!みんな水さんを目指しているのですから!水さんは1993年に入団、2010年に退団、音楽学校を入れて20年ですね。その間に恋愛とかって。。。(笑)
それはあまり語らないですね(笑)。まあ、凄く閉ざされた世界で、いま思えば濃密な世界を勉強させてもらいました。

 
●尊敬されてた先輩っていらっしゃいますか?
天海祐希さんには舞台の基本から全てを教えていただきました。何から何までつきっきりで教えてくださいました。

 
●人間的に奥深いとか?
若くしてトップになられた方でしたので、色々と人の痛みとかがわかるというか。若い迷える子羊に手を差し伸べてくださるというか。

 
●昨年あたりからタンゴをやってっらしゃいますよね。タンゴのダンスって難しいですよね。
全然ちがいましたね。普通のダンスとは。

 
●セクシーだし、大人のダンスって感じですよね。
去年は怪我だらけでしたよ。ヒールでひっかけてあっちこっち血だらけ。アルゼンチンかいらした振付師に教えていただきましたが、まず言葉が大変でしたね。

 
●今年も渋谷さくらホールで。
一緒に踊った彼もアルゼンチン人ですが、日本に10年以上いるので日本語がペラペラです。宝塚時代にタンゴを少しかじっていましたが、本格的なアルゼンチンタンゴは本当に素敵なので、嬉しかったですね。タンゴ仲間もできましたし。

 
●私、先日のマスカレードが終わってからどうなさったのかなと、カラダじゅうが悲鳴をあげていないですか?
いや、全然!むしろ、千秋楽は気持ちが楽なので。明日もやらなきゃって思うと、色々ケアしないといけないですし、緊張しますね。以前、宝塚退団後すぐに家族でハワイに行ったとき、みんなから「終わって放心状態なのかな」ってメールをもらったのですが、「いまハワイ」って返しました(笑)。

 
●ファミリーと仲が良いのですね!妹さんとは性格は似ていますか?
双子で細胞を分けた人間なので似ています。妹は子供が二人います。同時に生を受けて全然違う人生を歩むっていうのは感慨深いですよね。

 
●お子さんが水さんの舞台を観て宝塚に入りたいとか思ったりして。
妹の旦那さんがシルク・ド・ソレイユのボディケアをしているので、子供たちは小さい頃からそういったエンタテイメントの現場などを見ていますから興味はあるかもしれません。バレエも2歳からやっています。



 
●ダンスのレッスンは毎日やってらっしゃるのですか?
週に2、3回くらいです。ストレッチは毎日しています。

 
●水さんは宝塚時代はシャンソンがお好きでしたか。何がお好きですか?
シャンソンよりジャズですかね。スタンダード・ジャズをYouTubeで沢山見ています。

 
●最近はスカートとかはきますか?
はきますよ。宝塚をやめてからスカートをはく気がしなかったのですが、スカートをはくと自分らしくないと思っていたら、真矢(みき)さんに「スカートをはいても自分らしくいられる訓練をしたらいいんだよ」と言われて、いまは普通にはけるようになりました。

 
●真矢ミキさんといえば、10月のダンス公演は西島さんと一緒に出られるのですよね。こういうのは一か月ぐらい練習するのですか?
そうですね。

 
●さっき妹さんのお子さんとおっしゃって、結婚願望とかってあります?ファンの人はずっと独身でいらしてほしいとか思うのですかね。!
どうでしょうね。子供って可愛いだけじゃなく、大変な時間もとても多いですよね。世の母親皆様ほんとうに尊敬しますよ。

 
●好きなタイプの男性は?
久しく聞かれてないな(笑)。どうなんだろう・・・誠実に一生懸命生きている人かな。絶対努力しないと先に進めないじゃないですか。そういうことをちゃんとわかって実行出来る人でないと合わないかもですね。

 
●見た目とか大事でしょ?
わりとスッキリっとした体形の人が好きですね。どちらかというと、ちゃんと鍛えている人とか。

 
●ほんと、アイススケートとかボルダリングとか色々されていますよね。
まあ、そうですね。なんかチャレンジしたいと。急に。

 
●ボルダリングとか凄いですよね。
できないことはない!と思ってチャレンジです(笑)。

 
●健康に心がけていることは?
最近は水素水!活性酸素が除去されるということで。体が資本なので。

 
●東山(義久)さんとはけっこう仲良し?
そうですね。自分の男役時代と感覚が似てるなと。凄く共感できる部分があります。ビジュアルが若干似ているところもあるかもしれませんね。共演して改めて彼の魅力を知りましたね。



 
●最後に8月に「第47回サマージャズ」、10月に「いまも輝く昭和のスタンダード・ソングス」にご出演いただきますが、意気込みを聞かせていただけますでしょうか。
ビッグバンドで歌うというのはあまりないですし、凄く楽しみです。みなさん厳しい耳をもっていらっしゃると思いますので、一日だけですが頑張りたいと思います。10月はあの古き良き時代の空気を楽しみたいと思っています。
ダイナミックでキレの良いダンスと表現豊かなステージは水さんにしか創れないショー空間があり、毎回魅力的な水 夏希さんに出逢うことの楽しみで心トキメカされます。8月はJAZZ、10月は昭和のスタンダード・ソングスと2つの異なる音楽ジャンルにチャレンジです!!今まで見たことのない水さんに会いにいらっしゃいませんか。

 
インタビュアー:佐藤美枝子
カメラマン:Koji Ota
 
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