インタビュー Vol.20
JAZZとサーフィンが似合う男。ギタリスト小沼ようすけ


 
●ギターとの出会い
父親が趣味でギターを弾いていたので、それを見て興味を持ったというのがきっかけです。3、4歳ごろだったと思います。母親がオルガンの先生をやっていたのですが、父親がギターをやっていたので「男はギターが弾くものなのかな」と思って。中学の頃に家にいくつかあったギターを弾くようになりました。

 
●そのころからジャズを?
最初はロックでした。ジャズをはじめたのは東京を出て18、19歳ぐらいのときですね。音楽の専門学校に行ったのがきっかけです。4年ほどアルバイトしながら通い、理論的にことや譜面の読み方などもそこで学びました。

 
●独学だったのかなと思っていました。
基礎をしっかりやりたかったので学校で必死に勉強しました。

 
●一番最初にジャズのバンドを組んだのはいつごろですか?
その音楽学校の時ですね。学校の仲間と。初めてのライブは東中野の「キングビー」というところでした。いまはもうないのですけど。。。それから色々なミュージシャンに呼んでもらえるようになりました。実際デビューにつながったバンドが、アクアピットです。

 
●仲は良いですか?(笑)
良いですよ(笑)。わりと長い間一緒にいるから余計な気づかいとかないですね。各々で活動してきて得た新しいことをアクアピットに生かしたりしています。バランスはすごく良いなと思います。



 
●ほんとに色々な方と特に新しい方と演奏されていますよね。
色々な刺激をもらっています。

 
●ボーカリストの方とも多くご一緒されていますよね。
自分の世界にどっぷり乗ってくれるシンガーが良いので、だから自分から「歌の伴奏をやりたい」、という感じではないですかね。自分でないと才能が出ないと思ってくれる、理解してくれる方から声をかけてもらえます。

 
●そういえば、昔に小曽根真さんとのデュオが一番印象に残っているのが、すばらしかったですね。
自分にとって、あの経験が今に生きています。

 
●いまも一緒にやられていますか?
最近は小曽根さんがクラシックとかもやり始めてからはそんなにはないです。でもたまにばったりお会いしたりしますよ(笑)。あの時の緊張感と刺激はまた経験したいな。。。

 
●最近観に行かれたライブとかはありますか?
結構ラテンものが多いです。キューバ、南米やスペインのギタリストなどのミュージシャンに興味あります。ビセンテ・アミーゴとか、フォンセカとか、ゴンサロとか。。。根強い文化を持った音楽を彼らがどういう風に昇華してやっているのか、など凄く興味あります。

 
●今後ご自分の作る曲にも活かされるわけですね。
はい、そうです!

 
●3月にパプア・ニューギニアとかアジアに行かれておりましたよね。それはリフレッシュのために?
南のほうに行ってきました。前は音楽を発見しに海外へ行っていましたけど、今回は音楽が発展する前の原始的な文化を自分の目で感じたいなと思って。せっかくだから感じたことのないものを感じたいなと。

 
●現地の方とセッションとかは?
今回はなかったですけど、いずれやっていきたいなと思いました。次行くときはやりたいな。ミュージシャンとしてではなくて。。。なんていうか、最初からミュージシャンとしていくと予定調和的な感じがするので、それは嫌ですね。ミュージシャンではないところでどういう広がりを見せるのか、見てみたいです。ただギターを1本持っていって、ただ弾いてみるだけ、とか。意外とみんな反応してくれなかったり(笑)。そういうのも面白いかなと。



 
●あとサーフィンも絶対的な条件だったりして?(笑)
そうですね(笑)。やっぱり何日かはサーフィンで遊んでいました。あと遺跡を見に行ったり。そういうのも音楽の創造に役立ちます。

 
●これまで壁に当たったり、スランプに陥ったりはないですか?
なんていうか、常に壁があるというか、常にスランプというか(笑)。そういうニュアンスがずっとあって、なんか見えそうで見えないものをずっと求めているような。そして、それがいつ見えるのかというか。。。何か求めているものがあるのですけど、なかなか辿りつけなくて。だからいつも新しいものにトライしているのだと思う。でも少し見えかけてきたものがあるので今年はアルバムを作ろうかなと思い始めました。

 
●アルバムはこれまで約10枚リリースされていますが、初期の作品と比べて最近はかわりましたよね~。
成長はしましたよ。変わらない部分というのも大切にしていて、そのバランスというのも重要だと思っていますよ。

 
●落ち込んだりしてもエアポケットに入ったり思いつめたりしない?
いや、自分の好きなことをやろうとするときって、結果がでないことが多いからから、そうならないことが多いと思っている。とはいえ悶々としていることも多いです。

 
●いまは日本を代表するジャズ・ギタリストとして活躍されてますけど、ジャズというくくりでよろしいのですか?(笑)
そうですね。基本はジャズですけど、色々な要素がミックスされた音が出ていると思います。昔がそうであったように、なんか新しいな、っていうか2014年でしか生まれない、というような音楽をやりたいなというのは凄くあります。

 
●小沼さんのファッションのポイントとはなんですか?
僕は服はあまり気にしないですね。。。(笑)

 
●でもいつもお帽子かぶって、なんか小沼さんのスタイルがあるように思うのですけど。
割と理にかなっているものが好きで、たとえばギターを弾くには楽なものとか。そういう感じで選んで着ています。僕自身すごくこだわっているものはないですね。「これを付けてステージに立つと気持ちいいだろうな」、とかはありますね。あんまり考えていないです(笑)。

 
●今度、黒のタキシードでやってください!と言ったら着ていただけますか?(笑)
もちろん!持ってないですが(笑)

 
●そういえば今年で40歳ですよね。ベテランという意識に変わってきましたか?
変わってきたなって少し感じます。これまでは若手として扱わられてきたのが当たり前のようでしたけど、今後やることは。。。なんていうかヘタなことはできなーというか(笑)。下の世代からの期待もあったりしますし。20代、30代で得てきたものをそのままストレートに出していきたいなと思います。

 
●デビュー当時は、テクニックから音楽性から何もかも「すごい」という印象でしたが、ベテランになると「なんかいいな」というような熟年の良さも大事ですよね。
そうですね、「この人にしか出せない空気感だな」と言ってもらいたいです。
小沼さんが海辺に住居を移された時におっしゃっていた印象的だった言葉です。「海はギターを表現するという意味で助けられていて、自分が煮詰まってどうしようもない時、海沿いに引越して、すぐに海に助けられたものがあって、だから自分の音楽も海に恩返しできるような音楽を作っていきたいなと。それで自然からもらったものを曲にして、アルバムを作ったり。海のそばで海を感じると、自分は生かされているんだなって、身に染みるのでそういうものを音でいろんな人に伝えられたらいいなって思っています。」
いつも爽やかな笑顔と真摯に音楽と向き合うお姿が日々輝きのオーラを増していく小沼さんの10年後が楽しみです!

 
インタビュアー:佐藤美枝子
カメラマン:常見登志夫
 
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