インタビュー Vol.16
輝かしきデビュー25周年にブラボー!
寺井尚子


 
●寺井さんは4才からヴァイオリンを始められたということですが最初はクラシックからですよね。どんなきっかけでジャズに興味を持たれるようになったのでしょうか?
お腹の中から聴いていたようで。。。胎教ですね。もの心がついた頃からは自宅のステレオからヴァイオリン・コンチェルトを毎日聴いていました。母が好きで(笑)。もしかして、本人がやりたいと言ったらやらせてあげたいという気持ちがあったみたい。楽器として初めて認識したのがヴァイオリンですね。普通はピアノとかオルガンなどが多いですけど。3歳のときに本と定規でヴァイオリンを弾く真似をしていたそうです(笑)。それから4歳の時に、自分からやりたいと言って始めました。

 
●ピアノもやっていましたか?
そうですね、6歳から始めました。6歳のときにNHKのオーディションに受かって出演したのがきっかけですね。その番組で、先生である女性のソリストと接する機会があって、プロになろうと、ヴァイオリニストになろうと決めました。同時にピアノもやっておかねばならない、ということで6歳からピアノも始めました。

 
●ジャズヴァイオリンを始めるきっかけはなんだったのでしょうか?
14歳の時に腱鞘炎になってレッスンを休んだのがきっかけで、色々な音楽を聴き始めたのです。最初はポップスを聴いたりして。そして16歳の時にビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビィ」を聴いて、初めてのジャズを手にして、一気に驚きと・・・、なんて言うのでしょうか、カルチャーショックを受けましたね。アドリブとかの知識はなかったのですけど、すごく自由だなって思いました。「どうなっているのだろう」という知りたい気持ちと、私はヴァイオリンが弾けるから、こういう世界観をヴァイオリンでカタチにしたいと思いました。「ワルツ・フォー・デビィ」という世界は素晴らしい作品ですし、モダンジャズの大人っぽさが当時の私の心にぴったりときたのでしょうね。それでジャズを志そうと思いました。



 
●16歳というとなかなかジャズにはいかないですよね。。。難解ですし。簡単なものには興味なかったのでしょうね。それをヴァイオリンで表現するという人はいなかったですよね。。。
その頃はヴァイオリンで演奏する人が少ないということを知らなかったです。どこのレコード店に行ってもコーナーがないなって思ってましたね(笑)。少ないというのは私には問題ではなかったですね。

 
●きっとご両親からしたらクラシックに傾倒して欲しかったのでは?
もちろんそうです。やむを得ないですが、手の故障が起きたときはそれはショックだったと思いますし。私としては、一度リセットしてきちんと治してまたやりたいという気持ちはありましたが、親からすると、とてもさみしい時期だったのではと思いますね。いまは一番の理解者ですし、ライブにも来てくれます。



 
●寺井さんは1998年のファーストアルバム「Thinking of You」から、今年リリースされた「セ・ラ・ヴィ」まで、実に20枚ものアルバムをリリースされて、様々な楽曲にチャレンジされていますが、曲を作られる時はどのような時にふっと湧いてくるのでしょうか。
作ろうと思っている時ではなく、日常の中で湧いてくる時が多くて。移動中ですとか。ですので、いつも書き留めておきますね。わりとモチーフがあるとスラスラと出てきます。あまりつまづいた曲は入っていないと思います。

 
●最短で出来た曲はどの曲でしょうか?
30分で出来たのがアルバム「セ・ラ・ヴィ」に入っている「心の音、愛の歌」です。これからレコーディングする次回作の楽曲でも1時間くらいで書いた曲がありますね。

 
●1枚のアルバムでかかる期間はどれくらいなのでしょうか?
次回作に関していいますと、今回はかなり時間をかけてますね。そうですね、いま12月でレコーディング前ですけど、夏のフェス時期から制作を始めていますから・・・。楽曲を選び、実際に演奏してみて手直ししたり、キーを変えたりして納得がいくまで、いろいろな繰り返し、今回は本当に時間をかけましたね。

 
●その次回作のメンバーはどなたですか?
オリジナルメンバーにゲストが2人にパーカッションとヴィブラフォンです。

 
●寺井さんが日本のジャズヴァイオリンをブームにされた大功績者でもあり、第一人者ですが、2008年の東京JAZZでも素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。来年3月には、バンドネオン奏者の平田耕治さんとのコラボで、タンゴにチャレンジしていただくわけですが、2011年にはリベルタンゴ・イン・トーキョーも発表されています。リシャール・ガリアーノ “タンガリア” カルテットにスペシャルゲストとして、寺井さんが参加されましたが、その時のご感想は?
そうですね、すっごい緊張感と「無」ですね。なんにも覚えてないというか(笑)。緊張していたのでしょうね。それで音楽の中に入っているので。あとで録音を聴いてみると「こんなことを弾いていたのか」と思いますね。

 
●緊張して足が震えたりとかはありますか?
演奏中はないのですが、終わったあとに足がガクガクになったりだとかはありますね。以前のレコーディングの時、足が笑う、とはこういうことだって初めて思いましたね。ライブでは演奏前はいつも緊張します。

 
●そういう時のおまじないとかありますか?
ないですね!2時間くらい前から一人で集中しています。でもステージに立つと緊張がほどけていって楽しさに変化していきます。

 
●いつも魅力的なオーラーを放っていらっしゃるのですが、本当の性格はクールでサッパリ系の男前だったり?
そうですね、男っぽいと思います(笑)。「よし、行くわよ!」って。

 
●へこむときはありますか?
うーん、あまりないと思います。「何故そんなことが起きたのか」と考えて分析しますね。自分一人で解決できない事であったら、まず置いておきますね。



 
●今日(12/12、六本木STB139)のライブは名古屋でご活躍されている方々ですが、寺井さんは名古屋ではなく、藤沢市ですよね?
毎年クリスマスの時期に名古屋から来て歌ってもらっています。生まれは藤沢市ですが、私がヴァイオリンでジャズを志すようになってから家族の都合で名古屋へ移り、15年程前の5年間はまでいつも自分で車を運転して名古屋から東京までライブに通っていました。その頃から共にステージに立っていた仲間であり、すばらしいミュージシャンが本日のゲストです。

 
●寺井さんは1988年にプロデビューされて、今年で25周年と思いますが、25年を振り返り、充実の25年目だったのではないでしょうか?
あっという間でしたね。正確には、デビュー25周年、CDデビュー15周年、カルテットを結成して10周年らしいですよ(笑)。

 
●音楽を聞いたり演奏したりすることが、辛くなることってありませんか?
ないですね。

 
●寺井さんはご自宅で聞く音楽もやはりジャズがメインでしょうか?
いろいろなジャンルのものがあります。そして、音楽には向かっているのですけど、常に音楽を弾いているか、聴いているか、というとそうではないですね。

 
●BGMは流れているのですか?
音楽はBGMにはならないので。真剣に聴いてしまいますね。すごく耳が疲れてしまうので、音楽は集中して聴こうと思う時だけですね。聴きながら手紙を書くとかはできないんです。あとは日常を楽しんでいます。お掃除もお料理も趣味といえるぐらい好きですし。



 
●寺井さんのファッションとか、スタイルが毎回とても知的で素敵です。ブラックがイメージカラーのようですが、何か意味はあるのでしょうか。デザイナーさんは決まっているのですか?
そうですね、いつも黒ですね。デザイナーは決めていないですね。自分でセレクトしています。今日のベルトもいつもと違う初めてのものです。いつも少しずつアクセサリーを変えたりして楽しんでます。

 
●寺井さんのモットーといいましょうか、好きな言葉はなんでしょうか。
昔は「いつも明るく楽しく」と思っていたのですが。。。最近はそれだけでは物足りないと思っていて、「自分が心から楽しめるかどうか」ですかね。そのために何をするか考えてますね。一回、一回のステージがすべて今の自分を作っているので毎回ベストを尽くして次に繋げていく。それには心から楽しむことが大切ですね。

 
●寺井さんの好きな男性のタイプは?
あまりタイプはないかもしれないですね。好きになった人が好き、みたいな(笑)。自分を持っているというか、自分の生き方を持っている人には惹かれますよね。うーん、明るいほうがいいとは思うし、だけど大人しい感じも悪くないなとか(笑)。その人にあっていればいいんだと思うんです。そういうところは自由というか、ジャズというか・・・(笑)。

 
●本日は貴重なお時間を割いてくださりありがとうございました。
音と音との空間をデザインする魔術師のように、妖艶な美しさでいつも凛としていらっしゃる寺井さんのタンゴ演奏はどんなマジックを魅せてくださるのでしょう。

 
インタビュアー:佐藤美枝子
カメラマン:Koji Ota
 
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