インタビュー Vol.110
 

深化を重ねた 表現者の十五年

上原理生

 

 

ー15周年についてー
2026年で15周年を迎えられますが、ご自身にとってこの15年はどのような歩みでしたか

そうですね~15年か~ 本当に濃密な15年でしたね。
『ピアフ』を演っている時だったかな(思ったのは)~ まぁ、畑違いの何もわからないところからよくやってきたよな、と(笑)初めて参加させてもらったのは2018年で今回が3度目の『ピアフ』ですが、その時はお芝居に対しての確たるものがない中で、しのぶさん(エディット・ピアフ役:大竹しのぶ)とか梅さん(トワーヌ役:梅沢昌代)と一緒にお芝居をさせていただいたのですが、最初(ブルーノ役)は歌がなかったので、自分にしてみたら歌が武器なのに、それがない中で演じるので、とにかく必死に学ばせてもらいました。
今回は役もシャルル・アズナブール役で歌もあり、同じ作品で演じる度に作品への捉え方や、お芝居をするときの感覚が変わってきたことがこの15年の歩みにも繋がるのかな~とも思いますね。
 

水夏希

 

ー『ピアフ』についてー
最初に出演された『ピアフ』はオーディションだったのですか

いえ、この作品はどうですか?とお声がけいただいたのがキッカケだったと思います。
でも『ピアフ』では歌わないんだ~と思った瞬間、武器がない丸裸の状態で演じる怖さはありましたが、共演の俳優さんにがむしゃらについていき、「お芝居ってなんなんだろう?芝居するってどういうことなんだろう?」というのをすごく考えるようになった作品ではありますよね。
 

2026年1月〜2月 東京・愛知・大阪公演『ピアフ』シャルル・アズナブール役

 

ー東京藝術大学で学んだことー
藝大で声楽を学ばれていて、声楽家一本で行こうとは思われなかったのですか

それは思ったことはありました。卒業する時にこれからの進路をどうしようかと考えて現役生時代に大学院を受験したのですが不合格で、大学院浪人を1年経験してから『Les Misérables』のオーデションがあると聞いて受けたら合格したという経緯です。
人生は不思議ですね、もし大学院に合格していたらどうなっていたのかな~と思う時もありますね。
藝大で色々と学び、2011年にデビューさせてもらったのが、『Les Misérables』のアンジョルラス役でしたが、学生時代に『Les Misérables』を演ってはいましたが、演劇というものが全く分からない中で既に出来上がっている作品の中に飛び込んで舞台に立ち、先輩方に叩き込んでもらい俳優として多くのことを学んできて、加えて色々なミュージカル作品やコンサートもやらせてもらい、音楽家として色んなジャンルの音楽に出会えて、歌い手として舞台に立った時に、15年間俳優として学んできた感覚が歌に生かされてきて、俳優としても声楽家としても、とても良い循環が成されてきた15年でもあったと思いますね。
 

藝大在学中、小池修一郎先生の授業は受けられていたのですか

僕は履修していなくて、宝塚歌劇団を大好きな友達は履修していて、その友達から、聴講生で入れるから来なよ!って教えてもらい、受けていました。
 

 

ー苦労エピソードー
順調にキャリアを重ねられている印象ですが、挫折はありませんでしたか?

挫折ばかりですよ、いっぱいあります!その度に何くそ根性で乗り越えてきたと思います(笑)
できないから稽古をするのですが、できない自分にガッカリすることもあるし、でもできないから素直に学んでいけばいいだけなんですよね。自分自身との葛藤はそんなことの繰り返しです。
例えば、よく言われることは、自分の話している声がどうやら鳴るらしくて、自分自身はそれが分からないのですが、お芝居をしている時はその響く声が邪魔になり、普通に人が話している感じにならないようなのですね。その声をどうにかしろ!って言われるんですが、知ったこっちゃないって感じですよ(笑)
自分の台詞を言う声の出し方も変えなくちゃいけなかったりとか、素の自分でいられないもどかしさの挫折もあったりしましたね。
歌もそうですね。自分の声が鳴りすぎちゃうので日本語のミュージカルでは声の出し方も変えなくちゃいけなかったり、自分の身体に負担がくることでもあるので、そんな挫折もありました。
 

 

ー発声法についてー
上原さんのコンサートではオペラをはじめ、ミュージカルもJpopなど幅広いジャンルをお歌いになられますが、それぞれの発声法は違うのですか

コンサートなので、そこまで自分の身体を変えることはできませんが、言語の違いもありますね。ヨーロッパの言語は立体的な響きで身体の中で共鳴する空間が多いと思いますし、日本語はそれに比べると、軽めというか浅めというか、二次元的と言うか、出し方を変えたりしていますね。
 

水夏希
 

ー言語と発音ー
前回の『Gift of Classics & Musicals』でも様々な言語で歌っていただきましたがその発音はどのように習得されるのですか

そうでしたね。イタリア語、フランス語、英語、韓国語まで歌いました。
先日のコンサートで韓国語で歌う時はLENくんに発音の注意点などを教えてもらい、日本語にはない発音が韓国語にはいっぱいあるのですが、それに関しては学生時代に学ぶ時間がありましたので、そんなに困らなかったですね。それは普段から色々な言語に触れていたからかもしれませんね。それに歌と一緒だから覚えられるというのはあると思います。
 

日本語の次に得意な言語は何語ですか

それこそ大学受験する時からずっと学んできたので、触れていた時間が長いのはイタリア語かな~ 
母音も5つしかなくて、基本的にはローマ字読みなのであまり困らないです。
 

ー転機はー
俳優、上原理生としてのターニングポイントになった作品は

2012年から2022年までジョン役を10年演じてきた『ミス・サイゴン』ですね。
市村正親さんとご一緒させてもらって、舞台上で関わる時間は短かったですが、歳を重ねるごとに変化していくことで色んなことを学ばせてもらいました。

 
ジョン役で2012年より2022年まで出演
ミュージカル『ミス・サイゴン』は、2022年に日本初演から30周年を迎えた

 

ーそれぞれの魅力ー
ミュージカルとストレートプレイ、それぞれの魅力をどう感じていらっしゃいますか

昨年、出演したミュージカル『LAZARUS -ラザルス-』も芝居メインでしたが、良い経験をして成長させていただきましたが、どちらかというとやはり歌える方がいいですね。
歌えない作品はやはり辛いです。声楽家としてもこの1年~2年すごく充実していて高められている感覚があり、気持ち的にも潤いを感じてきた2年間でしたが、お芝居だけだと枯渇していくような感覚になるので、大切なことを学ばせてもらって悔いはないですけど、やはり歌える作品が嬉しいですね。
 

ー共演者についてー
これまで大竹しのぶさん、市村正親さん、鹿賀丈史さんなど日本を代表する俳優の皆様と共演されていますが、特に刺激を受けたことは何でしょうか

そうですね。有難いことにすごく贅沢な環境で学ばせていただきました。
 

 

大竹しのぶさんはどのような方ですか

しのぶさんは、あのままの方で、『ピアフ』を演じていて嘘のない方だと思います。僕もシャルル・アズナブール役として正面からぶつかり嘘のない演技でピアフに愛を捧げるという真剣勝負ですね。でも構えたらダメですし、しのぶさんご自身が1ミリも力んでいなくて、目に見えないエネルギーを本能的に感じ取って、無意識に返してくださる方で、もの凄く勉強になりました。
しのぶさんは演じている中で全然疲れないそうです。自分もその境地でいたいですね。15年かけてその境地にこれていたら嬉しいですね。
しのぶさんからの演技に対するアドバイスも前回のピアフまではあったけど今回はなかったので、僕の演技も少し成長できたのかなって、嬉しかったですね。
 

市村正親さんはどのような方ですか

市村さんはカリスマですね。圧倒的なもので引っ張っていってくれますね。黙って背中で見せてくれる俳優だと思いますし、叩き上げできた人だと思います。

 

鹿賀丈史さんはどのような方ですか

静かなる華。一挙手一投足がスターで、でもとてもチャーミングな方です。
『ある男』で凄く可愛がっていただき、メチャクチャ飲みにも連れて行っていただきました。鹿賀さんは歌で藝大に行こうとしていたと聞いていますが、それでか良くしていただいて。それで受験中だったのかな、お友達と劇団四季の研究所を受けてみようねって、受けたら鹿賀さんだけ受かっちゃったらしいです。あの高身長ですし、演出家の浅利慶太さんに気に入られて、最初の作品が『ジーザス・クライスト・スーパースター』に大抜擢されましたね。
劇団四季時代、踊らない俳優さんですが、鹿賀さんに「理生も踊らないだろ~、俺も踊らないし同じだね」って言われました(笑)


注釈:上原理生さんが共演した主なミュージカル作品
大竹しのぶさん:『スウィーニー・トッド』/ 音楽劇『ピアフ』
市村正親さん:『ミス・サイゴン』/『スウィーニー・トッド』
鹿賀丈史さん:『生きる』/『ある男』

 

ー性格についてー
上原さんは真面目で几帳面なイメージがありますが、客観的にご自身を分析するとどのような性格でしょうか

みんなには超がつくほど、バカがつくほど真面目だと言われますが、自分では当たり前なので、良く分からないですね。
 

水夏希
 

ー15周年YEARの目標ー
7月より、韓国の人気ミュージカル作品『AGATHA アガサ』も日本版として初上演が控えていらっしゃる上原さんですが
今回の『Gift of Love Songs &Musicals』で共演の韓国から来日する
キム・ドンワンさんとはインスタライブでもご一緒されましたが、どんな印象でしたか

とてもお茶目な方ですね。僕は存知上げなかったのですが、LENくんが学生の頃に物凄い人気で、熱烈なファンだったそうで[神話ーシンファ]というアイドルグループで活躍されていためちゃくちゃ有名なスターだそうですね。
実はインスタライブをやったあとで、『ミス・サイゴン』で共演したサンちゃん(チョ・サンウン 2022年公演:クリス役を好演)から電話をもらったのですが、僕が中学生の頃大活躍したすごく有名な人だよって、今度共演するんだね!ってビックリしていました。ドンワンさんは生き切った人なのか、とてもユーモラスでチャーミングな方でしたね。お会いするのがとても楽しみです。
 

LENさんは

昨年11月の『Gift of Classics &Musicals』で初めて共演させていただきましたが、真面目で一生懸命なかたですね。『ジキル&ハイド』より「時が来た」のコラボでは主旋律に対して上をハモってくれたLENくんの歌声が炸裂していて楽しかったし凄かったです!!一回きりでは勿体無いですね!
 

中田凌多さんは

初めましてでしたが、とても綺麗なお顔をしていますね。ミュージカルが好きだと言っておられましたので、若くてエネルギッシュですし、将来が楽しみな俳優さんですね。


川島ケイジさんは

シンガソングライターとして活躍されていて、普段、僕が関わることのないジャンルの方なので、どんな方なのかお会いするのが楽しみです。

 
水夏希
 

『Gift of Love Songs & Musicals』はどんなコンサートになりそうでしょうか。そしてご来場くださる皆さまへメッセージをお願いします

“この日しか見られない特別な時間”になると思います。
デュエットもありますし、今回はここでしか聴けないであろう楽曲にもチャレンジして、15周年の今だからこそお届けできる愛の歌を、ぜひ劇場で受け取ってください。

15周年という節目を迎えられた上原理生さん。
今回のインタビューで印象的だったのは「濃密」という言葉でした。
藝大で声楽を学び、2011年『Les Misérables』アンジョルラス役でのデビューから始まった道のり。
ミュージカル俳優として、そして声楽家として、決して平坦ではなかった時間の積み重ねを、上原さんは静かに、そして真摯に振り返ってくださいました。
歌が武器であるはずの自分が、歌えない作品に挑んだ『ピアフ』。
声が “鳴りすぎる” がゆえの葛藤。できない自分と向き合い続けた日々。
その一つひとつが、俳優としての感覚を歌へと還元し、歌で得た身体の響きを芝居へと循環させてきた十五年だったのだと感じました。
華やかな舞台の裏で、常に自分自身を疑い、磨き続けてきた時間。
その歩みこそが、今の上原理生という表現者を形づくっているのではないでしょうか。

『Gift of Love Songs & Musicals』では、十五年の深化を経た今だからこそ響く“愛の歌”を届けてくださることでしょう。
その一音一音に宿る時間の重みを、ぜひ劇場で感じていただけましたら幸いです。

 
インタビュアー:佐藤美枝子
撮影:NORI
取材協力:トラスター
許可なく転載・引用することを堅くお断りします。
小野田龍之介

上原理生

東京藝術大学声楽科卒業。卒業時にアカンサス音楽賞・同声会賞受賞。 2011年オリジナル演出版『レ・ミゼラブル』アンジョルラス役にて鮮烈なデビューを飾る。主な出演作に『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』(ローレンス・コナー演出)、『1789』(小池修一郎演出)、『ピアフ』(栗山民也演出)、『マリー・アントワネット』(ロバート・ヨハンソン演出)、『生きる』『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(宮本亜門演出)、『イザボー』(末満健一演出)、『LAZARUS』(白井晃演出)など。
また、声楽家としての顔も持ち、オペラ・クラシック、ミュージカル、昭和歌謡、映画音楽など幅広いレパートリーを歌いこなす【歌のジャンルを超えた架け橋】として、八ヶ岳高原音楽堂やBillboard、フィリアホールなどでもコンサートやリサイタルを精力的に開催。 声楽家の加耒徹との「かくりお」、歌手の堂珍嘉邦との「Bitter&Sweet」、ミュージカル俳優/シンガーソングライターの石井一孝との「Las Voces」といったデュオも好評を博している。その存在感、表現力、歌唱力を高く評価されている。 第4回イブラ・グランド・アワード・ジャパン声楽部門で第2位受賞。


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◎ 今後の主な予定
ミュージカル『AGATHA アガサ』
2026年7月〜:東京公演:明治座