インタビュー Vol.108
華麗に舞い、努力を美に変える男役を極めたトップスター
水 夏希

まず、宝塚時代についてお伺いします
長年宝塚歌劇団で、男役トップスターとしてご活躍されてきた水夏希さんですが
男役を極める中で、一番大切にしていたことは何でしょうか
美しくてカッコいいということが第一条件だと思っていたので、ビジュアルとスタイルですね。これは絶対に大事なことだと思います。
それは現在もそうですよね
今は美しさの基準が変わりましたね。今まで、カッコ悪いとか美しくないと思っていたことが、人が何かを訴える時に、見てくれも関係なく、ボロボロでも、その熱意があれば、美しいし、そこがカッコいいんじゃない!って宝塚を退団してから感じるようになりました。

雪組トップスターとして組を率いた際、心がけていたリーダーシップやお仲間への思いとは
まぁ、大きな家族のようですね。家族を大きな船に例えると、みんな乗組員で、誰かが困っていたら手を差し出して協力し合い助け合うというような優しさとチームワークの結束とでもいうのでしょうか。
特に印象に残っている役柄と今でも大切にされている作品を上げるとしたら
トップになってからですとやはり「エリザベート」と「マリーポーサの花」ですね。エリザベートガラコンサートを来年2月にも開催しますが、トート役だけでも10名のトートが出演しますので、それは凄いことになると思います。

スペシャル・ガラ・コンサート
宝塚歌劇団での経験が、今のご自身にどのように生きていると感じますか
根性とか、何か目標を定めてひとつずつ定めて積み上げていくとかのマインドセットはすごく役に立っていますね。
芸歴は何年ですか
今年は32年目になります。35周年に向かって頑張っています。

キャリアを積み重ねてこられた経験と共に美貌もスタイルも全く変わらずですね
いえ~変化は大きいですよ~(笑)今もたまに宝塚の舞台を観に行きますが、みんなそれぞれに激しい舞台で良く踊っているな~と思いますよ。同期もいますから、みんな凄いと思います!
舞台「アーモンド」公演を終えられたばかりですが、本作の原作者は韓国のソン・ヴォンビンさんという作家さんについて、この本を読まれたときの印象はいかがでしたか
原作ももちろん面白いなと思いましたが、作品となったときの方が、よりビジュアル的なものや感情的な部分も含めて彩り豊かに感じられたので、演じていて楽しかったですね。
障害や精神的な部分をデリケートにとりあげている作品なので主人公の一人称で書かれているミュージカル「アルジャーノンに花束を」に似ているところもあったかもしれませんね。

2025年8月〜9月
千穐楽を終えられたばかりですが、演じ終えた今のご感想は
そうですね~ストーリーが普通に展開していかなくて、色んな役を演じたり、瞬時に役が変わったり、なかなかない特殊な構成だったので、神経は使いました。誰にでも共通するようなテーマでしたので、共演者やスタッフの皆さんとも良い空気感の中で作品を創り上げることができました。
ミュージシャンの生演奏でしたので、一瞬、ミュージカルなのかしら?と思われて、物語を雄弁に語っているところなどは、贅沢なアンサンブルだったな~と思います。
ダンスシーンも沢山あって、それもコンテンポラリーな要素も含んだダンスはキッカケなど難しかったのではないでしょうか
キッカケは覚えるまでが大変でした。自由な感じで踊っているように見られたかもしれませんが、全て振付けです。
水夏希さんのYouTubeチャンネル「美健塾」ではまさに「美と健康に関する検証」を定期的に配信されておりますが毎回よく研究されていてビックリしています
2023年元旦から開始して、配信は毎週日曜日20時スタートです。
3年目に入りますが、少しでも皆さんの為になっていれば嬉しいですね。
いつまでやろうかな~と考えてはいますが(笑)
YouTubeチャンネルのお衣装が割とブラウン系が多いのですが、それは何か意識をされているのですか
私のパーソナルカラーがオータムなのでブラウン系を愛用しています。
水さんはクラシックバレエを高校2年生から始められたとのことですが
近年ではタンゴの公演が多いように思います。
クラシックバレエとは全く違うタンゴダンスの魅力を教えてください
楽器はほとんど一緒ですが、やはりバンドネオンの音色が魅力的ですよね。バンドネオンとのハーモニー、そしてテンポがどんどん変化していく所が心を持っていかれる魅力ですかね。

水さんにとっての究極の美とは
きっと、他人軸にならないように心がけることかしら。自分の中で完結できること、自分を愛せていれば他人も愛せるから、色んな細胞が活性化して内面から湧き出てくるものが美しさになるのではないかと思います。
水さんのトップでのお披露目公演は「エリザベート」のトート役ですが、今、韓国ミュージカル ON SCREENが話題になっております。
私も韓国ミュージカル ON SCREEN「エリザベート」は観に行きましたよ。
歌の素晴らしさは勿論、宝塚ver.との違いも楽しみました。

ミュージカル、コンサートやストレートプレイ、朗読劇、など幅広いジャンルを演じられておりますが、それぞれにどんな魅力を感じますか
どれもそうなんですがストレートプレイは特に奥が深くてやり甲斐がいくらでもある感じですね。ミュージカルは音楽があり、歌詞を忘れようが何が起ころうが、音楽と共にどんどん進んでいっちゃいますが、お芝居は喋らないと進まないので、喋らない中でも「間」という静寂の中に何か宿っていて、
そこがお芝居の面白さかなと感じます。いかにその「間」を操るか、上手い俳優さんと共演させていただくと、この台本の文字をこう読むのか!と刺激にもなり、そこは唸りますね!私も本読みの時にそんな風に感じてもらえる役者になりたいなと思います。今はもっとお芝居を深めたいですね。ミュージカルも好きですが、自分自身を掘り下げるなどの余地がお芝居の方が多いのかなと思います。
でも、今回のコンサートのように自分が出演していないミュージカル作品の楽曲を実際に演じられている俳優さんとご一緒に歌えることは本当に有り難いですし、楽しみです。
舞台以外で、日常生活で大切にしていることやリフレッシュの方法はありますか
そして完璧主義のようにお見受けしますが頭脳を休める時とはどんな時ですか
アーユルヴェーダにハマっていて、勉強もしているのですが、食生活や生活習慣にはメチャクチャ気をつけています。
そうなんですよね~ アーユルヴェーダでも休める瞬間を作りましょうという考えなのですが、それがなかなか出来なくて~
毎日お風呂の中でオイルマッサージをしているのですが、ネパールのシンギングボールをスピーカーで聞きながらやると凄く良いのです。エプソムソルトと重曹の入ったお風呂に顔まで鼻を摘んで1分間全身浸かるとこれもいいんですね!!これもそのうち「美健塾」のYouTubeでやろうかな(笑)

これから表現者として、目標がありましたら教えてください
人って凄く複雑だと思いますし、驚異のパワーを持っている存在だと思いますので、一括りにできない、十人十色の個性があり、それを演じられるようになることでしょうか。それでいて自分にしかできない魅力を表現できたらいいな~ということを追い求めていきたいと思っています。そのためにも自分を認めて、自分を受けいれることも大事ですね。いちばん最初に言った、ビジュアルからの他人軸の評価を凄く気にしてやってきたものを取っ払って、自分の持っているものと共演する俳優さんとの化学反応を積極的に楽しんでいけたらいいなと思います。

Gift of Classic & Musicalsをご覧になってくださるファンの皆さまへひとことメッセージをお願いいたします
このコンサートでしか聴くことのできない選曲とコラボレーションになりますし、音楽はホルモンにも深く良い影響を与えてれるので、健康的なアルファ波が出る時間になればいいなと思います。
龍ちゃんと健人くんは以前共演したことがあり、お二人共お若いのに達者で頼もしいなぁと!そして上原さんは初めまして。LENさんとはコンサートでご一緒したことがありますが絡みはありませんでしたね。
豪華 歌ウマ男性キャストの皆さんとの1日限りのコラボ!
クラシックとミュージカルの有名曲が散りばめられた素敵なコンサートになること間違いなしですので、皆様のご期待に添えるよう、私も精一杯歌わせていただきます。ヒューリックホール東京にてお待ちしております!
水夏希さんにインタビューをさせていただいたのは、実に10年ぶりでした。
いつも変わらず、スタイリッシュで妖艶なオーラを放ち、常に新しいことに挑戦し続けるストイックさには頭が下がります。
最近鑑賞させていただいたイ・ソンジュ原作の韓国小説を原作とした作品「アーモンド」は、 難解で文学的な作品でしたが、 水さんは一筋縄ではいかない役どころを、感情表現を抑えながらも舞台全体を支える強さで「人間の心の闇や孤独」を体現する存在として舞台を引き締めていました。一筋縄ではいかない役どころを、感情表現を抑えながらも舞台全体を支える強さで表現。宝塚歌劇団在籍中は、「スタイリッシュで現代的な男役像」と「ダンスを中心とした表現力」で高く評価され、特に挑戦的・前衛的な作品に強いトップスターの水さん、流れるAQUAのようにどんな流れにも順応してこれからもみずみずしい水夏希さんの魅力に迫っていきたいと思いました。
撮影:間野真由美

水 夏希
千葉市出身。元宝塚歌劇団雪組トップスター。宝塚退団後はミュージカル、ストレートプレイ、ダンス、コンサート等さまざまなジャンルの舞台に出演。
主な出演作品:『殿様と私』、『リア王の悲劇』、藤間勘十郎 文芸シリーズ 語りの世界vol.1『偐紫田舎源氏』、Song Storytelling『星の王子さま ~きみとぼく~』、Musical『HOPE』THE UNREAD BOOK AND LIFE、『Gran Tango』、『エンジェルス・イン・アメリカ』、詩楽劇『八雲立つ』、音楽朗読劇『大好きなお母さんへー冷蔵庫のうえの人生―』、『8人の女たち』、『奇人たちの晩餐会』、『Music is Beautiful~song&danceで綴るラブストーリー』、『LOVE SONG COVERS the WORLD 2020』 等。
■Official Site
■Official X
◎ ON AIR
タカラヅカ・スカイ・ステージにて『Gift of Classics & Musicals』についてのインタビューが放送されます。初回放送:2025年10月6日(月)23:00 番組名、リピート放送については画像にてご確認ください。
◎今後の主な予定
2026年2月〜3月 エリザベートTAKARAZUKA30th スペシャル・ガラ・コンサート
